FROM;長谷
工場排水の水銀が引き起こした「水俣病」。
小学生高学年の時に習った覚えのある公害病のひとつ(史上初の公害病認定)ですが、
その症状や患者さんの苦悩は教科書に載っておらず、私も水俣病の症状や経緯は今回初めて知りました。
下記は水俣病の症状等について発覚後初期段階で発表された文献です。
水俣地方に発生した原因不明の中枢神経系疾患に関する疫学調査成績
今般水俣市周辺の漁民部落を中心として続発を見た錐体外路系障害を主兆候とする原因不明の中枢神経系疾患は、その症状が特異的かつ激烈であり、予後が極めて不良であるところから、忽ち現地の注目を浴びた。
(略)
症例第一例:山中、二十八歳、職業漁業
発症年月日:昭和三十一年七月十三日
現病歴:(略)八月に入ると歩行困難が起こり、七日、水俣市白浜病院(伝染病院)に入院したが、Chorea様運動が激しく更にBallismus様運動が加わり時に犬吠様の叫声を発して全くの狂躁状態となった。
引用:熊本医学会雑誌(第三十一巻補刷第一)、苦海浄土(石牟礼道子)
そしてその患者さんへの保障として、排水を流した工場である新日窒水俣工場(当時)が提案した金額を簡単に要約すると、
・認定された大人への保障:10万円
・認定された子供への保障:3万円
・認定された死者への保障:30万円
これは、月額じゃない、と聞いて愕然としました。
なんとこの金額は、「年」単位の金額です。
苦海浄土という本
水俣に育った作者が患者とその家族の苦しみを自らのものとして記録を綴った「苦海浄土」という本に出会い、水俣病の悲惨さは学校で教わった表面上の勉強とは全く違い、排水処理に携わる人間として身の引き締まる思いがしました。
もちろん、工場側にも言い分がありました。そしてその後の漁民のデモなど、被害者側にも色々と問題はありました。
そのあたりも丁寧に綴られているのですが、当時の水俣市は新日窒水俣工場からの税収がほとんどを占め、またそこに務める地元の人もかなり多く、まさに企業城下町でした。工場に何かを言いにくい雰囲気はあったようです。
やはりイカやタコが獲れなくなる(予兆)猫が狂ったように死に出す(予兆)胎児性患者が発生する、このあたりで本腰を入れてしっかり調査するべきだったと思います。
水俣病の原因である有機水銀自体も、自然界に多く存在しており、特に魚介類に有機水銀を含んでいないものはないと言われています。そのあたりも原因の特定が遅くなった理由ですが、著者は冷静な目で「原因がわからない、わからないと言っているが、その前にまず患者の保障を行い、漁民への説明を行うなどの行動ができたはずだ」と訴えています。
責任
「苦海浄土」は排水に携わる人間が全員読んでも良いのでは、という素晴らしい内容でした。
排水処理には責任が伴います。
価格はもちろん大事ですが、やはり会社として信頼できるか(大小ではなく)、このあたりが決め手になるのではと思います。
おかげさまで弊社も10年、ポンプ及び排水処理に携わらせて頂いておりますが、今後も大きな責任感を胸に仕事を進めたいと思います。