ゴム手袋は実は穴だらけ!?

FROM:福岡

 

みなさんはゴム手袋を使っていますか?

 

手袋しているから安心だと思っていませんか?

 

安衛法が改正される前は、

特定の薬剤に対して対応すべきことが法律で詳細に決められており、

それに従って対応すればOKでした。

 

しかし、国の大きな方針として、各企業による自主管理(やり方は各企業が決める)に大きく舵が切られました。

 

そこで、何をしたらよいか?どこから手を付けたらよいか?お困りの方がとても多いかと思います。

 

できるだけ具体的な対応方法を知りたい

 

という声を頂きましたので、私が検討1)している

化学物質を扱うときに使用する手袋を例にあげ、

 

“ゴム手袋が本当に穴だらけ”かどうかも含め、

 

対応するときの1つの考え方をご説明します。

 

 

皮膚等障害化学物質

 

 

安衛法改正の一つに皮膚等障害化学物質*1への直接接触の防止があり、

約1200の物質が対象となっています。

 

そこで、

薬品を使用するときによく用いられている薄手の天然ゴム、ニトリルゴム、ポリエチレン手袋に対して、

 

有機溶剤のアセトン(マニュキュアの除光剤としても使われています)とイソプロピルアルコールが、

どのくらいの時間で通り抜けるか実験してみました。

 

図1を見て下さい。

 

図1 手袋の透過性

 

アセトンでは、どの手袋も30秒以内に透過し、

イソプロピルアルコールでは、天然ゴムとポリエチレンは1分以内に、

ニトリルゴムは5分程度で通り抜けていることが分かります。

 

というわけで、

 

“ゴム手袋は実は穴だらけ?!”

 

かもしれません。

 

 

しかし、目に見える穴が開いているのではなく、

手袋のゴム構造のとても狭い隙間を薬品が通り抜けているんです。

 

通り抜けた薬品は、人体に吸収され悪影響を及ぼすことになります。

 

アセトン、イソプロピルアルコールは皮膚等障害化学物質ではありませんが、

他の薬品でも同様のことが起こるので、薬品が通り抜けない手袋を選ぶ必要があります。

 

 

では、どうすれば良いか?

 

1200種類もある皮膚等障害化学物質について、

一度に手袋を選ぼうとしても、どう進めたらよいか分からなくなってしまいます。

 

そこで、

優先順位をつけて、ハイリスクから対応していくのはいかがでしょうか?

 

過去の事故事例、ヒヤリハットの中からでも良いでしょうし、

対応しやすいものからでも良いかもしれません。

 

これらの中からハイリスクを見つけて対応し、1つ終わったら、次、その次と進めていけば、

少しずつではありますが前に進んでいきます。

 

そして、

その経験が次に必ず生きてきます。

 

実は、何がハイリスクかを見つけるのはかなり大変なのですが、

皮膚等障害化学物質への対応のために厚労省が出している

 

皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第2版2)のp.76に

以下の図が出ており、リスク分けのヒントとなりそうです。

 

※図2 作業分類、作業時間及び使用可能な手袋の対応表

 

例えば、

有機溶剤や酸、アルカリに製品や部品を浸けて手作業で洗浄する工程があったとします。

 

この作業は、手袋の上からですが必ず薬剤に接触します(作業分類1)。

 

接着剤や塗料などを使った作業では、指先や手のひら等に接触する場合があります(作業分類2)。

 

少量の有機溶剤で実験する場合は、ほとんど薬剤とは接触せず、万が一のために手袋をする場合があります(作業分類3)。

 

作業工程1をハイリスク、作業工程2を中リスク、作業工程3を低リスクと考えれば、

まず、作業工程1をつぶしていくことに、異論はないでしょう。

 

もし、作業分類がすべて同じ場合は、

薬品の毒性、使用量、使用頻度が高いものをハイリスクとしてとらえれば良いかもしれません。

 

穴だらけの手袋を使用しないように、皆さん、考えてみてください。

リスクの仕分け ⇒ ハイリスクを優先的に対応 ⇒ 次のハイリスクを対応 ⇒ 中・低リスクへの対応 の流れで検討すれば、少しずつでも前に進み、対応方法が見えてくるのではないでしょうか?

 

この考え方は、手袋以外にも使えると思いますので、是非、ご検討ください。

 

リスクアセスメントのツールにCREATE-SIMPLE3)がありますが、これもハイリスクをあぶりだすツールだと考えてお使いになるのが良いかと思います。

 

少しでも皆様のご参考になれば幸いです。ぜひ、ご感想、ご質問、コメント、次回取り上げてほしいテーマなどをお寄せください。

 

感想、質問、コメントはコチラから!

 

 

*1皮膚等障害化学物質とは、皮膚や目に障害を与える可能性のある化学物質、または皮膚から吸収されて健康障害を引き起こす可能性のある化学物質のこと

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo108_1.html

参考文献

1) 福岡荘尚、リアルタイムモニタによる化学防護手袋の耐透過性評価、安全工学、vol.63, No.3, pp.162-168 (2024)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/63/3/63_162/_article/-char/ja/

2) 厚生労働省、膚障害等防止用保護具の選定マニュアル第2版、(2025)https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001393159.pdf

3) 厚生労働省、職場の安全サイト CREATE-SIMPLE

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07_3.htm