有機溶剤を吸い込まない、皮膚につけない

FROM: 福岡(オリンパスメディカルシステムズ)

 

私たちの身の回りにはたくさんの有機溶剤があります。

 

接着剤やペンキなどの塗料に有機溶剤が入っていることはご存じかと思いますが、

 

これ以外にも、

プリザーブドフラワーの脱水剤、

ネイルアートの除光液にも有機溶剤が含まれています。

 

除光液はアセトンが多く用いられていますが、

最近はアセトンフリーのものが販売されています。

 

しかし、アセトンの代わりに酢酸エチルや酢酸ブチルなどの有機溶剤が使われており、

有機溶剤フリーではありません。

 

ネイリストさんの中には、

有機溶剤による健康被害が発生する事例もあり、

 

日本ネイリスト協会ではネイルサロン向けの化学物質管理講習会を開いているようです。

 

のように身近なところで使われている有機溶剤ですが、

以下の3点が使用するときの最も重要な注意点です。

 

 

①有機溶剤を吸い込まない。

②手袋をしていても、極力、有機溶剤を皮膚につけない、触らない。

③火気厳禁(火はもちろんですが、火花、摩擦、衝撃で 着火する 場合もあり)

 

 

有機溶剤を安全に使用する方法

 

基本的には、

①~③を行えば有機溶剤を安全に使用することができます。

 

そこで、

表に一般的な有機溶剤の性質を示し、なぜこのような注意が必要かをまとめます。

 

 

接着剤、塗料、除光液などは、

短時間で乾燥しないと困りますからどうしても揮発性が高い必要があります。

 

例えばアセトン(沸点:56℃)はとても蒸気になりやすい性質を持っています。

 

そこで、できるだけ吸い込まないように風通しの良い場所で作業する。

排気装置のある場所で作業する。

場合によっては、防毒マスクが必要な場合もあります。

 

また、皮膚から吸収されないように、

有機溶剤を通さない手袋を使用することが重要となります。

 

加えて有機溶剤の蒸気は引火性が高いため、

火災・爆発の危険があり火気の取り扱いに注意が必要です。

 

 

しかし、有機溶剤の中にも沸点が高く揮発性が比較的低いものもあります。

この中にNMP(N-メチル-2-ピロリドン、沸点:約200℃ ちょっと恐竜の名前のようですが・・・)があり、

リチウム電池の部材を製造するための溶剤、

シンナー(半導体用レジスター)、洗浄(電子部品、金属部品、金型、ジグ、装置など)、医薬品の製造など特殊な用途に広範囲で使用されています。

 

NMPは蒸気になりにくいため呼吸で体内に吸収されにくく、

火災や爆発の危険性も低く、

加えて、種々の物質をよく溶解するため、便利で重要な物質となっています。

 

 

その反面、

皮膚や眼から吸収されやすく、体内に吸収されると、

流産や生殖能力の低下、肝臓や腎臓、免疫系、神経系の異常といった深刻な健康影響を引き起こすことが分かっています。

 

さらに、いろいろな物質が溶けやすく普通では体内に吸収されない物質もNMPと一緒に吸収されて、

別の健康被害を引き起こすこともあります。

 

揮発性が低いからこそ皮膚に付着すると、

そのまま吸収されてしまいます。

 

長い時間、または濃度の高い蒸気を吸い込んだりすると、

肺などに影響を与える可能性があるため、適切な換気が必要なこともお忘れなく。

 

このNMPは近年、ヨーロッパ、アメリカでも規制が始まっており、

日本でも昨年、皮膚等障害化学物質に指定され、不浸透性(通過や透過しない)

保護具(保護衣、保護手袋、保護眼鏡など)の着用が義務化されました。

 

このようにNMPは、慎重に取扱う必要があるヤバい物質なのかもしれません。

 

 

有機溶剤はどれも危険性、有害性を有しています。

 

しかし、どうすれば危なくない状態で使用できるか?

が重要で、

容器を開けるときにウエスをあてるだけでも皮膚への付着を減らすことができます。

 

うまく使いこなせれば種々の大きなメリットを得ることができます。

 

 

厚生労働省による手引きは以下です。有機溶剤を安全に使用するためにご参照下さい。

 

有機溶剤を正しく使いましょう

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/120815-01.pdf

 

 

皮膚からの有機溶剤の吸収を防ぐためには、

適切な手袋を選ぶことが必要です。

 

以下のセミナーで、適切な手袋の選定のための簡易的な手袋の透過性を調べる方法について講師を務めます。

ご興味をお持ちの方はご参加ください。Web参加もあり無料です。

 

11/29(土)13:20~14:50 令和7年度 後期 CERI寄附講座(公開講座・一般公開)

 薬品を扱う時に使用する手袋の簡易的な透過性の評価方法

 http://www.ceri.mac.titech.ac.jp/index.html

 

 

少しでも皆様のご参考になれば幸いです。ぜひ、ご感想、ご質問、コメント、

次回取り上げてほしいテーマなどをお寄せください。

 

ご感想・コメントはコチラから!

 

皮膚等障害化学物質:皮膚や眼に障害を与えるおそれがある物質、または皮膚から吸収されて健康障害を引き起こすおそれがある化学物質のこと。